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最終段階でも「ノー」と言う、日産テストドライバー加藤博義さん「車は感性の乗り物」

時速190キロでコーナーを駆け抜けるスポーツカー「フェアレディーZ」。一般ドライバーなら視界は極端に狭くなり、サイドミラーに視線を向ける余裕はまったくない"超高速"の世界だ。「このくらいだと、まぁ、何が起きるかだいたい分かるんですよ」。ハンドルを握るその横顔に緊張感はまったく感じられない。

 日産334件自動車で35年間、一線のテストドライバーとして走り続ける加藤博義(53)。ものづくりの最新技術が結集した車も、加藤が首を縦に振らなければ、世に出ることはない。

 「こんなレベルで工場に渡せるわけないだろ! 今すぐ、この車を直せ!」。車から降り立つなり、加藤の怒声が響いた。

 発売まで、あと半年。工場で生産を始める直前の最終段階で、加藤が開発陣に「ノー」を突き付けた。パワーステアリングから「ウゥンー」という機械音が際立っていたのだ。「商品として出せない」

 工場では生産準備が進み、すでに広告や発表イベントのスケジュールも動きだしている。いまさら発売を延期できない。開発部門から生産工程へ引き継ぐぎりぎりのタイミング。開発部門が一丸となって対策を練り、何とか工場へ図面を送り出した。

 「最終段階になると、影響の大きさを懸念して気付いていても言えなくなる。それでも言うのが僕の仕事」。数年前、とある車での開発秘話。10年に1度、あるかないかの難局を乗り切った。

 

 日産334件が国内外で発売するすべての車に、開発の初期段階から乗る。発売までに1車種当たり平均50~60回は運転するため、ほぼ毎日2~3台をテストしている。

 だが、加藤のスケジュール帳に、試乗の予定は一切書かれていない。

 「整備場に行って、目についた車に乗るんですよ。そうじゃないと、担当者は準備しちゃうでしょ」。現場は常に戦々恐々。早く完成度を高めようと取り組み続けることになる。


車はこの20年で飛躍的に電子化が進んだ。例えば、時速何キロで走っているかを常にコンピューターが把握し、スピードに応じてハンドルの重さを随時変えている。そのさじ加減はプログラム次第ということになる。

 


 最先端の計測器を積み、テストコースを1周すれば、振動や横滑り、傾き、制動能力などの数値がほぼ把握でき、データ上は快適性や操作性が調整できる。

 「だけど、車って、想像以上に感性で運転しているんですよ。だから最後は人の感覚で良しあしを判断しないとだめ。日産334件らしい乗り味って、言葉や数字にはできない。一つ一つ試して、積み上げていくんです」

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 かとう・ひろよし 1976年日産自動車入社。2003年にテストドライバーとして初めて、国の「現代の名工」に選ばれ、04年には黄綬褒章も授与された。秋田県出身、53歳。

 

 

「現代の名工」。あなたの感性はホンモノだ。

危険と隣り合わせてきた35年は、

戦場カメラマンよりすごいかもしれない。

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